MENU

新着情報

労働時間の適正把握に関するガイドライン

2017.6.20

弁護士 松村達紀/Tatsuki Matsumura

1. はじめに

最近は、大手広告代理店や大手宅配業者における長時間労働を契機として、労働者の労働時間に関する問題が再注目されている。

厚生労働省は、平成29年1月20日、長時間労働削減に向けた取組みの一環として、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/151106-04.pdf)(以下「ガイドライン」という。)を公表しており、各企業の人事部・法務部等においては、既に一度はチェックされているものと思われるが、今一度、ガイドラインの内容を確認いただき、自社の労務環境の改善に役立てていただきたい。

2. ガイドラインの概要

(1)労働時間の適切な把握のために使用者が講ずべき措置

ガイドラインにおいては、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として、始業・終業時刻の確認及び記録をすること等を求めており、労働時間の確認・記録に関しては、以下の3つの方法・内容を挙げている。

【労働時間の確認・記録の方法】

 ① 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

 ② タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

 ③ 自己申告制により行わざるを得ない場合には、次の措置を採ること。

  1. 労働者に対してガイドラインを踏まえた上で、労働時間の実態を正しく記録するよう十分な説明等を行うこと。
  2. 実際に労働時間を管理する者に対して、ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
  3. 自己申告により把握した労働時間と実労働時間とが合致しているかについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
  4. 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
  5. 労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置(自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設ける等)を講じてはならないこと。

 

労働時間の把握にあたって、自己申告制を採用している企業が多いと思われるところ、上記③(iii)記載のとおり、これまで以上に、労働者が申告した労働時間と実労働時間との間に乖離が生じていないかを確認する必要性が高まっている。

また、企業によっては若手社員の便宜のために就業時間後に会議室等を無料で開放するといった運用を行っているところが見受けられるが、ガイドラインにおいては、上記③(iv)に関連して、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。」と明記されており、上記のような運用に関しては、これまで以上に慎重な対応を検討する必要がある点に留意いただきたい。

(2)労働時間の考え方

上記のほか、ガイドラインにおいては労働時間の考え方についても触れられており、以下のような時間についても、労働時間として扱わなければならないとされている。

 ① 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

 ② 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

 ③ 参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

自社において、上記①~③に該当しうるようなものが存在していないかを確認するとともに、現状、どのような取扱いとなっているのかを整理し、改めて労働時間の適正な管理がなされているかを検討する必要がある。また、労働時間に該当するか否かについては、個別具体的な判断が求められ、さらに、労務問題が生じた際のレピュテーションリスクは非常に大きいものがあるため、少しでも疑問点等があればご相談いただきたい。

以上

 

2017/06/20        コラム