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労働条件の変更に対する労働者の同意の有無についての判断の方法

2016.11.11

弁護士 松村達紀/Tatsuki Matsumura

 

1. はじめに

労働条件の変更に対する労働者の同意の有無についての判断の方法に関して、最高裁判例(最判平成28年2月19日判タ1428号16頁)が出されたため、これを紹介する。

 

2. 判例の内容

(1) 事案の概要

信用協同組合2社の合併に伴い、消滅会社の職員における退職金の支給基準が不利益に変更されたことに関し、当該職員の当該変更に対する同意の有無等が問題となった事例。

 

(2) 判例の要旨

「労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり、このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても、その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではないと解される(労働契約法8条、9条本文参照)。もっとも、使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である。

 

3. コメント

従業員の同意を得て、賃金や退職金に関する基準等を不利益に変更する場合、単に同意する旨の書面を受領するだけでは足りず、かかる書面を得るに至る状況(情報提供の内容や説明にかけた時間・状況等)についても、判断のポイントとなることが明確化されたといえる。

そのため、このような場合には、説明状況等に関して議事録を作成するなどして、従業員の同意が真意に基づくものであることを裏付ける資料を、逐次、証拠化しておくことが重要である。

以上

2016/11/11        コラム